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2018年8月30日 (木)

憎まれ口の多い嫁

今年に入ってから、胸が急に痛み始めた。咳も止まらない。
医者に行き、レントゲンを撮ってもらったら、肺に影が写っていた。
医者からCT検査を勧められるも、仕事で時間がとれず、放置してた。
家事と育児に追われる嫁には、余計な心配をかけたらいけないと思い、
「たいしたこと無いよ。しばらく様子を見てくださいってさ」とごまかした。

ある日、いつもの残業で深夜に帰宅すると、嫁が神妙な顔をしている。
「お医者さんから電話があったんだけど…」と切り出した。
医者はCT検査のことで電話をしてきたらしい。

(よけいなことを…)と思いつつ、嫁に話をした。
「CTだったら会社の検診で希望すれば撮れるし、今年は希望するからさ」
「検診って半年以上も先じゃない。手遅れになる病気だったらどうするのよ」
「今は咳だけだから、そんなに大層な病気じゃないよ」
そんな調子で喧嘩になった。

「勝手にすればいいじゃない。万が一のことがあっても、 子供は私が一人で立派に育てていくから」
嫁はそう捨て台詞を残して、その日から別々の部屋で寝ることになった。

ある時、家に置いている「家庭の医学」にしおりがついている。
そのページを開けたら、そこには「肺がん」のことが詳しく書かれていた。
レントゲンの白い影、明確な自覚症状が無い……、
自分に当てはまることが多かった。
それで検査を受けることにした。

忙しい時期なので、休暇を取得するにも一苦労した。
結局、休暇がとれたのが、検査を受けると決めてから1週間以上経った、一昨日だった。
一人でいいって言ったのに、なぜか嫁がついてくる。
病院への道中、まだ喧嘩の名残が残っているせいか、憎まれ口ばかりを叩いてくる。

「子供のことは心配しないでね。 実家に戻れば、あとの生活は困らないから」
「私もまだ若いから、いい再婚相手が見つかるかも知れないし」
このまま踵を返して、着替えて出社しようかとも考えた。
そして病院に到着。

CT前のソファーで、無限とも思える長い10数分間を過ごした。
検査は、あっさり終了した。
嫁はまだ憎まれ口を叩いている。
「今、検査技師の人が通ったけど、私のことを憐れむような目で見たような気がする。
やっぱり、悪い結果だったんじゃないの?」などと。
そして診察室へ…。
10数枚のCT画像を前に、女医の先生がおもむろに口を開いた

「肺腫瘍は無いですね。全く異常無しです」
安堵した。
肩の力が抜けて、ホッとため息が出た。
と、次の瞬間、隣で立っている嫁が突然、号泣し始めた。
しゃくりあげながら、
「うちの主人、大丈夫なんですね?、命にかかわることは無いんですね?」と言った。
正直、あっけにとられた。
声を聞きつけ、隣の処置室からも、何人か看護師さんが顔をのぞかせた。

女医さんの話を聞くと、最初の胸の痛みは、どうやら肋間神経痛で、
レントゲンの影は、器官が集中して2次元的に重なった箇所が、
たまたまそのように写ったのだろうとのこと。

嫁はなおも目頭を押さえて泣き続けている。
ふと見ると女医さんも目を潤ませており、看護師さんの中には、ハンカチで目を拭いている人すらいた。
メークを落としてすっぴんになった嫁を連れて、病院を後にしながら、
がらにもなく、
「健康に気を付けて、節制しよう」
なんて思った。

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